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経営戦略とは

雑感

企業が競争優位を築くためには、だれに対してどのような価値を提供して勝つのか、どのような儲けの仕組みを構築するのか、どのように勝ちパターンを永続させるのか、などを考える必要がある。たとえば『競争の戦略』で知られるマイケル・ポーターは、①コスト・リーダーシップ、②差別化、③集中、という企業の3つの「基本戦略」を、そして企業はこれらの3つの戦略の中から1つを重点的に行なっているという競争戦略を提示した。ここで経営戦略論を分析することとしたい。

 

まず、コスト・リーダーシップについて述べる。企業の戦略の目標は「利益」の最大化であり、企業価値を高めることでもある。この場合、売上げを大きくするか、コストを小さくするかのいずれか、または両方が必要となる。さらに利益を継続的に確保するためには、「コスト優位」を築く必要がある。このコスト優位を作るためには、「経験曲線」がひとつの方法である。「経験曲線」とは、「ある製品の累積生産量が2倍になると実質コストは一定の割合で低下する」というものである。経験曲線の事例として半導体メーカー等があり、組織としての継続的な業務改善や設備の改良、作業の専門化や標準化、さらに技術革新などによりコストの低下につながった。また大量の生産ができると、原料を他社より安価に調達できる「規模の利益」も発生することとなる。たとえば、コンピュータ業界におけるメインフレームの進化の初期段階においては、その能力や処理速度は主だった顧客のニーズを十分に満たしていなかった。このような商品機能が顧客のニーズを十分に満たしていない段階であれば、一般的に最も儲かるのは、最終消費者向け商品を設計・生産する垂直統合型企業である。垂直統合型企業はコスト面で有利になり、規模の経済が高まるのである。こうしてIBMは、垂直統合が進んだ企業として、市場シェアを上回る業界全体の利益を稼ぎ出したのである。それではコンピュータ業界において、他社はどのような戦略を立てるのか。IBMと同様に垂直統合を進め追随するのか、あるいは新戦略を立てるのか。こうした状況下では、IBMと同じ競争をしようとしても通常は失敗する。したがって、競争方法を転換していく必要がある。たとえば一般的な顧客のニーズを上回る柔軟性の高い商品をもっと迅速に市場に導入し、以前よりずっと小さなニッチ市場の顧客ニーズに応えるように商品をカスタマイズしていく。デルコンピュータはIBMより商品が優れているというよりむしろ、競争のスピードや利便性、カスタマイズ性に優る顧客仕様の戦略を取った。つまり、規模の経済が高まり差別化の機会が大きくなる段階において、大きな利益を生み出す事業領域の次のシフトを予期し、他社に追随するのではなく他社の戦略や段階に応じて行動を変え、ブルー・オーシャンを生み出したのである。


次に、差別化について述べる。コストが同じでも、他者と違うものを提供することで顧客が選んでくれれば有利だ、という発想が差別化にはある。この差別化の方法としてブランド化がある。たとえば、iPhoneという「破壊的イノベーション」が登場した時、携帯電話市場はフューチャーフォンからスマートフォンという新しい市場が創造された。その導入初期においては、iPhoneというブランドが顧客に新しいライフスタイルや価値を提供し、iPhoneを販売する携帯電話会社が他の携帯電話会社との差別化の要因となった。しかし、破壊的イノベーションが「持続的イノベーション」になり、サービスがコモディティ化した場合には差別化が困難となる。この場合には、プライシングによる低価格戦略を取ることもできる。たとえば、ソフトバンクが月額料金の引き下げを実施したとする。すると、NTTドコモauからソフトバンクに顧客が移動してしまう。したがって、NTTドコモauも月額料金の引き下げを実施し、顧客が移動しないようにする。そして、NTTドコモauソフトバンクが月額料金の引き下げの低価格戦略を実施することで3社とも利益が減り、「囚人のジレンマ」に陥る可能性があるのである。こうした価格差別が困難になると、また新しいサービスを提供する必要が出てくる。たとえば、ソフトバンクは携帯電話の契約者に対して牛丼やドーナツのクーポンを配信する等のサービスを始めた。このほか、携帯電話市場はMVNO仮想移動体通信事業者)の参入により、差別化の競争が激しくなることも予想される。


かつてない変化が激しい現在の世界において競争優位を築くためには、自社の優位性を見極め、他者との比較において相対的に優位な点を見極め、他社による模倣やそれを妨げる条件を考えておくことが必要になる。また、VUCAの環境(volatility〈変動幅が大きい〉、uncertainty〈不確実性〉、complexity〈複雑性〉、ambiguity〈曖昧さ〉)においては、戦略的実験によるアダプティブ型の「適応」によるアプローチも有効だろう。そして、今後の新たな競争パラダイムを超えるためには、IoTやブロックチェーン等の活用による破壊的イノベーションを開発することや、企業は戦略パレットに基づいてアプローチを選択し、領域(事業部門、機能、地域など)ごとに異なる戦略アプローチを組み合わせて経営を行なっていくことも求められる。