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「全員参加の社会」実現のための若年者雇用対策(未就職卒業者や中途退学者)〜ニッポンの雇用2.0〜

    日本の人口は、2008年の1億2,808万人(2010年国勢調査より)をピークとして減少に転じている。現状の出生率の水準が続けば今後も人口減少は続き、2050年には総人口が1億人を割り込み9,708万人、2060年には9,000万人を切ると推計されている(2015年版高齢白書より)。また、生産年齢人口(15〜64歳)は戦後一貫して増加を続け、1995年には8,726万人に達したが、その後減少局面に入り、2010年には8,173万人となった。そして2027年には7,000万人を割り、2051年には5000万人を割ると推計されている。
 このように、高度成長期における人口ボーナスの時代から少子高齢化が進展し働く人より支えられる人が多くなる状況、すなわち人口オーナスの時代においては次のような問題が生じる。まず、労働力や資本などの生産要素が制約を受けるため、経済成長率が低下する。これに対応するためには、少なくなっていく生産要素を最大限効率的に活用し、生産性を上げていくことや従来型の働き方の見直しが必要である。また、人口オーナスの状況を地域別に概観すると、地方部から大都市圏に就業機会を求めて生産年齢層が流出する。その結果、地方部の成長力が低下し、就業機会が生まれにくくなることで、更なる人口流出を招き、人口オーナスを強めるという悪循環に陥る可能性がある。
 こうした状況下ではあるが、我が国の経済は2013年に入って経済政策への期待等から株高が進んだこと等を背景に企業や家計のマインドが改善し、個人消費を中心に内需がけん引するかたちで持ち直しに転じた。さらに、2014年以降も景気は緩やかな回復基調が続き、雇用情勢も着実に改善するなど経済の好循環の動きが見られている。人口減少という制約の中においても、こうした経済の好循環の動きを拡大させ、安定的な成長を実現していくために、女性・若者・高齢者をはじめとした「全員参加の社会」の実現とともに、人的資本のポテンシャルを最大限発揮させることと、様々な分野における人材不足や地域が抱える課題に対して、積極的な雇用政策が求められる。
 これらを踏まえて、労働需給が逼迫する中で、労働供給を増加させ安定的な成長を目指す「全員参加の社会」の実現のための若年者雇用対策として、未就職卒業者や中途退学者を対象にニッポンの雇用2.0を検討する。

(1)現状と課題
 若年労働力人口(15〜34歳)は2014年で1,732万人であり、総労働力人口に占める割合は26.3%となっている。
 まず、労働供給の側である未就職卒業者や中途退学者の現状について、以下のとおり述べる。
   ①未就職卒業者
   就職希望者のうち、就職が決まらないまま卒業する者を「未就職卒業者」という。この未就職卒業者は、2015年には約3.1万人存在している。
 これまで未就職卒業者に対する取組として、厚生労働省文部科学省及び経済産業省による連携で「未内定就活生への集中支援」を実施している。具体的には、未内定の学生・生徒に「就職をあきらめさせない」ためのジョブサポーターと大学の就職相談員等との連携による個別支援の徹底、保護者を通じた未内定の学生・生徒への就職支援の周知、民間就職情報サイトによるジョブサポーター・新卒応援ハローワーク等の周知などを支援している。
 ②中途退学者
 学校等を中途退学した者を「中途退学者」という。中途退学者の総数は、全学生数(中途退学者、休学者を含む)2,991,573人のうち2.65%に当たる79,311人となっている(文部科学省「学生の中途退学や休学等の状況について」平成26年9月25日より)。
 これまで中途退学者に対する取組として、地域若者サポートステーションを活用した支援事業として「高校中退者等アウトリーチ事業」を実施している。これは、高等学校等と連携の下、進路の決まっていないおおむね1年以内の高等学校中途退学者(予定者を含む)を対象に、訪問支援担当のキャリア・コンサルタント等による自宅等への訪問支援(アウトリーチ)を実施し、学校教育から地域若者サポートステーションへの円滑な誘導を行い、切れ目のない支援を通じ早期の自立・進路決定を促すものである。
 なお、2015年9月11日の「勤労青少年福祉法の一部を改正する法案」の成立により、ハローワークが学校と連携して職業指導等を行う対象として「中退者」を位置づけることとなった。
 次に、高校・大学における未就職卒業者支援に関して(独)労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.81高校・大学における未就職卒業者支援に関する調査」を元に、以下のとおり述べる。
 ③未就職学卒者
 未就職卒業者について、高校における未就職卒業者及び大学における未就職卒業者に分けて調査されている。
(ア)高校における未就職卒業者
 (a)「進学も、就職も、一時的な仕事もしていない者」及び(b)「一時的な仕事に就いた者」を、職業への円滑な移行や進路が決定していない卒業者を広義の「未就職卒業者」とし、それぞれ(a)5.7%、(b)2.3%となっている。これが卒業者計に占める未就職卒業者の割合で全体の8.0%となっている。
 まず、未就職卒業者の進路については、(a)のうち「卒業時は就職希望で、現在も求職中」が13.9%、「進学希望で、受験浪人中」が37.0%を占めている。そして、(b)のうち「正社員に登用される見込みのある「一時的な仕事」」が12.4%、「正社員になる見込みはない「一時的な仕事」」が61.0%、「どのような仕事かは不明」が23.3%となっている。
 次に就職希望者がいた高校のうち、学校外の機関を活用したかという問いには、活用したという回答が64.4%を占めている。これらの高校に対して、どのような組織のどのような支援を活用したかをみてみると、支援機関別ではハローワーク厚生労働省・労働局を含む)であり、78.0%となっている。このうち内容別では、ハローワークのジョブサポーター、ハローワーク・労働局関連の合同面接会・説明会、ハローワークからトライアル雇用等を紹介される、サポステ等の活用に分類される。続いて、未就職卒業者等に対して実施している支援をみてみると、ハローワークなどの求職を支援する機関について教える、学校として進路相談を受ける体制を作っている、等が実施されている。
(イ)大学における未就職卒業者
 (c)「進学も、就職も、一時的な仕事もしていない者」及び(d)「一時的な仕事に就いた者」を、職業への円滑な移行や進路が決定していない卒業者を広義の「未就職卒業者」とし、
それぞれ(c)15.8%、(d)3.4%となっている。これが卒業者計に占める未就職卒業者の割合で全体の19.2%となっている。
 まず、未就職卒業者の状況については、(c)のうち「現在も求職中である」が39.8%となっており、これは卒業者に占める割合にすればおよそ1割弱となる。なお、(c)約2割は「公務員や教員、資格試験の準備中」の者であり、また5%程度が「留学や大学院等への進学準備中」の者であった。そして、(d)のうち、「正社員に登用される見込みは特にない「一時的な仕事」」が69.9%と7割程度となっており、「正社員に登用される見込みのある「一時的な仕事」」が20.8%と約2割となっている。
 次に未就職卒業者の特徴をみてみると、「就職活動をスタートするのが遅い」「自分の意見や考えをうまく表現できない」「教員や職員にほとんど相談しない」「何をしたらいいかわからない」「エントリーシートが書けない」などが多い。また、未内定学生が会社・仕事選択に当たって重視する基準については、地域条件、企業の知名度、企業の業種、仕事内容が「こだわり」となっていることがみられる。
 さらに、未就職卒業性に対する卒業時・卒業後の支援をみてみると、9割の大学が卒業後も学校として就職相談を受ける体制を整えており、また7割が卒業後も情報収集できるように配慮していた。これに対して、卒業前に、学生職業センターなどの就職支援機関について、個々に教えている大学は6割弱であり、新卒者向けの職業体験や職業訓練の制度について、個々に教えている大学は4割台にとどまっている。
 また、就職支援・キャリア形成支援に関する問題点、必要な施策について求めた意見結果を述べる。就職支援等に関する問題点・必要な施策は、学生の意識啓発やキャリアガイダンス等の支援の必要性の割合が多くなっていることや、個別相談・心理的支援の必要性などを指摘する割合が高かった。
 続いて、大学等中退者の意識等について(独)労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.138大学等中退者の就労と意識に関する研究」を元に、以下のとおり述べる。
 ④中途退学者
 まず、中退を決めるまでの相談相手としては、親・保護者が79.3%と最も高く、学校の教職員・カウンセラーや学校内外の友人が2割台でそれに続いている。誰にも相談しなかった者は全体の12.5%で、大学中退者でその割合は高い。次に中退理由をみてみると、「勉強に興味・関心が持てなかったから」が49.5%と最も高く、「経済的に苦しかったから」は3割弱となっている。また、最も重要な中退理由としては、「学業不振・無関心」を挙げるものが4割以上と高く、「家庭・経済的理由(妊娠・出産を含む)」と「進路変更」がそれに続いている。さらに、中退後の就職活動の状況をみてみると、ハローワーク利用の経緯は、「親」「友人」で6割近くを占め、特に「親」という回答が多かった。中退時には「正社員として就職したい」と半数近くの中退者が考えているが(46.6%)、実際に正社員として就職するための準備をした者は3割にとどまり(32.1%)、アルバイトを探したり(31.8%)、アルバイトを継続した(27.3%)などの行動が多くみられる。
 これまで労働供給の 側である未就職者及び中途退学者の現状等について述べたが、次に労働需要の側である企業の面から採用の現状等を分析することとする。
(一社)日本経済団体連合会による新卒採用(2014年4月入社対象)に関するアンケート結果は、以下のとおりである。
 (ア)採用選考にあたって特に重視した点
 コミュニケーション能力(82.8%)が最も高く、続いて主体性(61.6%)、チャレンジ精神(52.9%)、協調性(48.2%)、誠実性(40.3%)の順に高くなっている。
 (イ)採用選考にあたって学業成績の重視について
 やや重視している割合が最も高く(48.5%)、あまり重視していない(22.6%)、どちらともいえない(20.1%)と大きく差をつけている。
 (ウ)既卒者の採用について
 既卒者の応募受付は、既に実施している割合が69.2%となっている。また、既卒者採用の形態としては、新卒採用の扱いで実施する割合が84.0%となっており、中途採用の扱いで実施する割合は1割弱(9.5%)となっている。さらに、応募受付の条件としては、卒業後3年以内であることの割合が最も高く55.4%となっており、正社員としての就業経験がないこと(42.3%)、特に条件なし(25.7%)に大きく差をつけている。
 (エ)大学が実施する学内セミナーへの参加状況
 学内セミナーへの参加状況について、91.4%が「参加したことがある」となっている。また、「今後、参加回数を増やしていきたい」とする回答企業の割合は、63.9%となっている。

(2)検討・考察
 景気の緩やかな回復基調が続き、雇用情勢も着実に改善が進んでいる(2015年11月の完全失業率は3.3%(18年ぶりの低水準)、有効求人倍率は1.25倍(23年ぶりの高水準))。しかし、正社員有効求人倍率は過去最高水準であるが、依然として0.79倍と雇用の質が課題であり、また介護、保育、看護、建設などの分野では人手不足感が強まっている。このため「全員参加の社会」を実現し、日本経済のさらなる安定的な成長のため、未就職卒業者や中途退学者が労働市場に参入できるような取組が求められる。
 そして、この取組のためには前述(2)で述べたような、労働供給の側である未就職卒業者と中途退学者の現状及び課題等と労働需要の側である企業の採用における現状等のマッチングを高めることが、労働供給を増加させ、人口オーナス時代における「全員参加の社会」の実現による安定的な成長につながると考えられる。
 まず、労働需要の側である企業の採用では、コミュニケーション能力の重視や学業成績をやや重視するという結果が出ており、労働供給の側である未就職卒業者や中途退学者が就職機会を確保するためには、若者の適職選択や能力の有効な発揮を可能とする環境を整えることが求められる。
 たとえば、未就職卒業者については、高校・大学いずれも「進学も、就職も、一時的な仕事もしていない者」の割合が高く、この者は「求職中である」が多くなっている。そして、未就職卒業者の特徴として、「就職活動をスタートするのが遅い」「教員や職員にほとんど相談しない」「何をしたらいいかわからない」「エントリーシートが書けない」などがある。このため未就職卒業者については、就職支援の周知、個別支援による対策などが考えられる。次に中途退学者については、最も重要な中退理由として「学業不振・無関心」があるため、学業継続を支える基礎学力や大学等による学習支援が重要である。また、学習支援に代わるものとして、職業訓練等を実施することも考えられる。この職業訓練等の実施は、中退時における「正社員として就職したい」というニーズに応えるものでもある。さらに、「相談・サポート体制の充実」、「支援機関や相談機関の周知や拡充」など、更なる情報発信も求められる。
 いずれにしても未就職卒業者や中途退学者の就職機会の拡大のためには「エンプロイ・アビリティ」の強化が必要であり、このためには就職希望者に対して有益な情報提供をすること、及び職業訓練を実施し、労働供給と労働需要のマッチング機能を高める必要があると考える。

 

未完成版ですが…